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ご長寿よろず診察室 神経内科のお話し その13

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第13回:めまい
担当ドクター 北村伸先生 (日本医科大学武蔵小杉病院 内科)


 77歳になる村澤さん(仮名)が、家族に付き添われ車いすで受診してきました。昨日午前10時頃に突然めまいがするといって横になり休んだそうです。夕食には起きてきて少し食べましたが、めまい感は続いており、ご飯を飲み込みにくく感じていました。一晩寝ればよくなるのではないかと思っていましたが、朝になってもめまいがあり、ふらふらして歩けなくなっていました。そこで、心配になり病院に来たわけです。

診察をしてみると
 どんなめまいですかときくと、自分の周りがぐるぐると回っているような感じがするということでした。四肢の麻痺はありませんでしたが、立たせるとすぐよろけてしまい、歩くことはできませんでした。そして、物を飲み込むこと(嚥下)がうまくできませんでした。頸から上では右側、頸から下では体の左側で痛みと温度(温かさや冷たさ)を感じることが低下(温痛覚低下)していました。
診察の結果からどこに病気があるとわかるのでしょうか
 神経の病気の診断は、症状や診察の結果から病気のある場所をみつけます。そして、次にその原因を診断します。これから話すことは少し難しいかもしれませんが,読んでみてください。
  脳の部位については、脳を矢状方向に正中で切った図1を参考にして下さい。

両下肢の麻痺がないのに立ったり歩くことができないのは、体のバランスをうまくとれないことによります。これは、小脳に異常があるときにみられます。小脳は脳幹(中脳、橋、延髄)というところとつながっているので、それらをつないでいるところに病気があっても、小脳に異常があるときと同じような症状が出ます。

 嚥下がうまくできないことは,物を飲み込むときに働く延髄にある脳神経(舌咽神経と迷走神経)に障害があるからです。

 感覚(痛みと温度)の障害は,感覚を皮膚から脳に伝える経路に障害があるからです。顔では右側に感覚の障害があり,頸から下の体(四肢と体幹)では左側にあることは,延髄付近の右側で感覚を伝える経路が障害されていることを示しています。左側の四肢と体幹の痛みと温度の感覚を伝える経路は脊髄の右側を、右側の感覚の経路は左側を通って脳(視床)にいきます。顔の痛みや温度を感じる経路の始まりは、同じ側(右側なら右側)の延髄から橋にあり、少し大脳に近づいたところで反対側に移って、視床に行きます。
 
図1. 矢印方向に正中で脳を切った断面とそのMR
したがって、村澤さんの病気の場所は,延髄の右側にあると考えました。

原因は,急に症状が始まっていることから脳血管障害(脳梗塞や脳出血)を考えました。
 MRIをしてみると
 予想したように延髄の右側に脳梗塞が見つかりました(図2)。村澤さんには入院をしていただき治療を行いました。

めまいが症状の病気

 村澤さんの最初の症状はめまいです。めまいについては第一回にも書きましたが,たくさんの原因があります(表)。特に治療の必要もなく心配しなくてもよいものから、村澤さんのようにすぐに治療を始めた方がよいものまで様々です。
 めまいには、ぐるぐる回っているように感じる(回転感)ものと体が揺れているようなふわふわした感覚(動揺感)や目の前が暗くなったように感じるものがあります。

 回転感のあるめまいの原因には村澤さんのような脳幹部の梗塞や小脳の出血や梗塞、前庭神経炎などがあります。耳鳴りと難聴を伴うものにはメニエル病や突発性難聴があります。
 図2. MRIT2強調画像
矢印は延髄右側の梗塞を 示しています。
表 : めまいが症状の主な病気

  めまいの種類       回転感のめまい            動揺感のめまい         
   病  気  脳幹部の脳梗塞      
 小脳出血、梗塞
 前庭神経炎
 メニエル病
 突発性難聴
 脊髄小脳変性症
 自律神経失調症
 高血圧
 低血圧
 脳腫瘍 


 体が揺れている感覚のめまいは、神経の変性がある脊髄小脳変性症、自律神経障害、高血圧症、低血圧症などがあります。高血圧の薬の効果が過剰で血圧が下がりすぎていることもあるので、めまいを感じたときには服用している薬によることも考えておかなくてはいけません。


めまいを感じたときにはどの科を受診したらよいでしょうか

 めまいをおこす病気は、神経内科、耳鼻科、そして脳神経外科で治療をするものがほとんどです。耳鳴りや難聴を伴っているときには耳鼻科で最初に診察してもらうのがよいと思います。その他の時は、神経内科を受診するのが良いと思います。
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