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ご長寿よろず診察室 神経内科のお話し その14

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14回:認知症に気づくには

担当ドクター 北村伸先生 (日本医科大学武蔵小杉病院 内科)


 私の外来に頭痛で通院している手塚さん(仮名)から認知症を見つけるにはどうしたらよいのですかときかれました。手塚さんは50歳で、2世帯住宅に奥さんと子供2人と自分の両親と一緒に住んでいます。両親とも77歳ですが、最近読んだ健康雑誌に、歳をとると認知症になることは珍しくないと言う記事があり、両親のことが心配になったそうです。

両親のことをきいてみました

二人とも元気で今までと変わったようなことはないということでしたが、自分は仕事が忙しく、会ったときに声をかける程度で、普段あまり会話はしないということでした。奥さんは母親とはよく話をするそうで、特に変わった様子はないけれども2年ぐらい前から二人とも少し物忘れがあるようだが歳をとってきたのだからしょうがないと言っているということでした。

物忘れについて思い出してみて下さい

第5回のご長寿よろず診察室に書きましたが、認知症の始まりの症状の物忘れは、歳をとったことによる物忘れとは違って生活に支障があります。手塚さんには、両親の生活が以前と違ってきているかどうかを確認するように話しました。

しかし、手塚さんは両親の住んでいるところに行って部屋の様子を見たり、あれこれと質問をするのはあまりしたくないと言いました。もっと、さりげなく普段の会話の中で認知症に気づく方法を教えてほしいということでした。

会話から認知症に気づく方法 

そこで、ひとつの方法を話しました。認知症の存在に気づく手段の1つに、初期認知症症徴候観察リスト(OLD)というのがあります。これは、かかりつけ医がアルツハイマー型認知症を疑う患者を見つけるためにオランダで開発された方法ですが、一般の人でも使うことができます。

表:初期認知症徴候観察リスト(OLD
)
 1 いつも日にちを忘れている 
  2 少し前のことをしばしば忘れる
  3 最近聞いた話や情報を繰り返すことができない
  4 同じことを言うことがしばしばある
  5 いつも同じ話を繰り返す
  6 特定の単語や言葉が出てこないことがしばしばある
  7 話の脈絡をすぐ失う
  8 質問を理解していないことが答えからわかる
  9 会話を理解することがかなり困難
 10 時間の観念がない
 11 話のつじつまを合わせようとする
 12 家族に依存する様子がある

 
 OLDとは
 表にOLDの内容を示しました。手塚さんの場合は、認知症かどうか心配な両親との会話の中から、12の項目についてあるかどうかをチェックします。OLDでは4以上の項目があると認知症の疑いがあることになるのですが、もしひとつでもチェックされた項目があれば認知症の可能性を考えて、かかりつけ医に相談したり神経内科や精神科を受診して認知症かどうかを診断してもらうことがよいと話しました。 
OLDのやり方のヒント 
  「1.いつも日にちを忘れている」
 「2.少し前のことをしばしば忘れる」
 「3,最近聞いた話や情報を繰り返すことができない」
という項目は、物忘れについてです。今日の曜日や月日をきいたり、今日は何を食べたのかきいてみたり、2−3日前に話したことを覚えているかをさりげなく会話の中できいてみます。

「4.同じことを言うことがしばしばある」
「5.会話の中で同じ話を決まったようにする」
という項目は、会話のなかでの繰り返しです。いつも同じ昔話をしたり、前にきいた話を最後まで以前に話したことを気付かないですることがこれに当たります。

「6.特定の言葉がしばしば出てこない」
というのは、使い慣れている言葉が出ないことです。たとえば、カメラが趣味であったのにシャッターという言葉が出なかったり、主婦が包丁と言いたいときにその言葉がでないことです。

「7.話の脈絡をすぐに失う」
という徴候は、関係のない話を次から次へとしていくことです。

「8.答えから質問を理解していないことがわかる」
「9.会話を理解する事がかなり困難」
という項目は理解ができないということです。質問したことと関係のない返答があったり、会話していても内容がかみ合わず会話が成立していないと判断できれば、これらの徴候の有無はチェックできます。

「10.時間の観念がない」
という徴候は、午前か午後かわからないということです。

「11.話のつじつまを合わせようとする」
というのは、間違ったことを言ったときにそれを指摘すると言いつくろってつじつまを合わせようとすることです。

「12.家族に依存する様子がある」
ということは、会話中に何かを尋ねると自分では答えられないので、すぐに同席している家族の方に顔を向けることです。


実際に使ってみると 
 手塚さんは父と話をしてOLDをチェックしてみました。

日常のあいさつや昔の話はできていたのですが、3日前に今度の日曜日に家族で食事に行く約束を父はすっかり忘れており、そんな約束をしたことはないと言っていたそうです。そして、日にちをきいてみたところ「今は仕事をしていないから日にちなんか気にしていないんだ」と言って、答えてくれなかったそうです。

さりげない会話をすることで、OLDの2つの項目(1.いつも日にちを忘れていると2.少し前のことをしばしば忘れる)があるとチェックできました。今度は、父を連れて診察をしてもらいに私の所に来ますと言っていました。

OLDの利点 
 物忘れがあるかどうかのテストは、人によっては不愉快に感じるかもしれません。その点OLDは、話している相手に気づかれることなく誰でもチェックできます。

認知症の人は自分では認知症のあることに気づきません。周りにいる人が気づいてあげる必要があります。そのために、OLDを利用してみて下さい。
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