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ご長寿よろず診察室 神経内科のお話し その22

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第22回:発熱と頭痛が続いた71歳の男性
担当ドクター 北村伸先生 (日本医科大学武蔵小杉病院 内科)


 71歳男性の石川さん(仮名)は、今まで大きな病気をしたことはありませんでした。70歳で退職した後は、子供の頃からの趣味である鉄道模型を作ったり、日本の各地に電車や汽車の写真を撮りに行っていました。

 8月のある日、朝早くから、石川さんはいつものように撮影の準備をして、南流山という駅に貨物電車の写真を撮りに出かけて行きました。
その日は雲一つない快晴で、朝から気温も高く、奥さんからは、帽子をかぶって、水分を補給し、熱中症にならないようにして下さいといわれていました。石川さんも、電車が来ないときは南流山駅のホームの日陰にいるようにして、水分も十分にとっていたつもりでした。しかし、午後1時頃から何となく体がだるく、軽い頭痛を感じ始めました。だるさが段々ひどくなり、肩や大腿の痛みも感じだしたので、2時頃には南流山駅を後にして自宅に帰りました。
自宅に帰って
 体温計で熱を計ると37度8分でした。熱中症か風邪を引いて、熱が出て頭痛があると思い、かかりつけの内科医院を受診しました。先生に、のどが少し赤いといわれ、風邪でしょうということで、痛みを和らげ、熱を下げる薬を処方されました。

その後の経過
 夕食後に、薬を服用すると熱は少し下がり、頭痛も軽くなりました。明日の朝には具合も良くなっているだろうと思い床につきましたが、明け方再び頭痛が始まり、昨日よりもひどくなっているように感じました。熱も38度まで上がっていました。昨日処方された薬を飲むと頭痛は少し和らぎ、熱も下がりますが、しばらくすると頭痛が始まり、体温も上がって来るということが続きました。症状が始まってから3日たっても、同じ様な状態で、いっこうによくならない感じがしたので、再びかかりつけの内科医院を受診しました。
 内科医院から紹介される
  かかりつけの先生は、風邪だと思うけれども、念のため頭の検査をしてもらいましょうといって、私の所に紹介をしてくれました。
診察をしてみると 
  石川さんの症状は、発熱と頭痛でした。診察では、いつものような神経学的診察も含め、問題となるような異常はありませんでした。ただ、ベッドに仰向けに横になってもらって、石川さんの頭を手でもって持ち上げると、手に抵抗を感じ、頸部の筋肉が堅い(頸部硬直)ことがわかりました。

 頭部CTスキャンを行ってみましたが正常でした。

 次に腰椎穿刺を行い、髄液(図)を調べました。
            
 図: 髄液循環
    脳と脊髄の周囲には、髄液があります。したがって、私たちの脳は、水の中に浮かんでいます。
    髄液は、脈絡叢というところで作られ、循環して、静脈に入っていきます。髄液の量は、150ml
    ぐらいです。髄液を調べることは、脳や脊髄の病気の診断に役立ちます。
    矢印は髄液の流れを示しています。
髄液検査の結果 
  3番目と4番目の腰椎棘突起の間に穿刺針を入れて髄液を採取しました。その時に髄液圧を測定します。石井さんの髄液圧は220mm水柱と高く、髄液の蛋白は60mg/dl(増加)、糖は50mg/dl(正常)、細胞数は352/mm3(増加)で細胞の種類は95%がリンパ球で、5%が多核白血球でした。

 以上の結果から、ウイルス性の髄膜炎と診断しました。
 ウイルス性髄膜炎とは
  ウイルスにより脳の表面を覆っている膜(髄膜)におきた炎症です。炎症を起こす原因にはこの他に細菌や真菌などがあります。子供から老人までどの年齢にもおきます。症状は、急に始まり、発熱と頭痛があります。その他に吐き気、光をまぶしく感じる、筋肉痛などがみられることもあります。診察をすると頸部硬直が認められます。診断は、症状から疑い、石川さんのように髄液を検査して、圧が上昇しており、蛋白と細胞の増加していることで決まります。

 髄膜炎の原因により、髄液所見に特徴があり、原因を区別するのに役立ちます。例えば、細菌性の髄膜炎では、糖が減少しています。特に結核によるものは髄液中の糖の低下が著しいです。細菌性の場合には増加している細胞の多くは多核白血球です。

 ウイルス性髄膜炎は、ほとんどが特別な治療をしなくても2-3週間でよくなります。石川さんは、発熱と強い頭痛があったので入院してもらいましたが、1週間程度で症状は消失し、8日目には退院をしました。

 発熱と頭痛は、風邪を引いたときにもあります、しかし、症状が発熱と頭痛であり、それが長く続き、のどが痛かったり鼻水や咳などの他の症状のない時は、髄膜炎の可能性があることを記憶しておいて下さい。
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