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ご長寿よろず診察室 神経内科のお話し その24

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第24回:中国神経内科医師との雑談2—不老長寿—
担当ドクター 北村伸先生 (日本医科大学武蔵小杉病院 内科)


 ご長寿よろず診察室は、24回になりました。始まってから2年経ったことになります。今回は、病気のことではなく、中国神経内科医師の劉春玲先生との雑談その2を紹介します。
不老長寿
北村:「歳をとると病気になることが多くなりますが、老化を防いで長生きをするために中
     国で昔から言われている方法はありますか。」
劉 :「約2000年前に書かれた本にあります。その本は黄帝内経といい、中国医学の
     経典です。」
北村:「黄帝内経には不老長寿の方法についてどの様なことが書かれているのですか。」
劉 :「陰平陽秘、精神乃治;陰陽離決、精気乃絶と古い中国語で記載されています。中
     国医学では腎気の衰弱と脾胃機能の低下が老化の主な機序だと考えています。
     ですから、体の陽気を助けて、陰陽の平衡を保つのが、摂生養生の基本です。
     ですから、季節気候と陰陽の変化にしたがって、精神、行動などいろいろな方面
     から総合的に摂生しなければいけないと私は理解しています。」
北村:「季節気候とは、春夏秋冬、寒暑ということですか。」
劉 :「その通りです。」
北村:「では陰陽とは何ですか。」
劉 :「中国医学で使用される相対的な概念です。物事の属性を示すものです。例えば、
    火(暑い)は陽に属して、水(寒い)は陰に属します。体の前面と内臓は陽で、背中
    と腑は陰です。気は陽で、血は陰に属します。」
北村:「何となくわかりますが、難しいですね。」
劉 :「中国の医学を勉強しないとわかりにくいかもしれませんね。」
季節気候と陰陽の変化にしたがう方法 
 劉 :「それでは、季節気候と陰陽の変化にしたがうことは、どういうことかを話しましょう。
     まず、春は陽が始まる季節なので、遅く寝て早く起き、外で運動をして、陽を養う
     ことです。夏には、万物が繁って、陽が旺盛で、人体の陽気が発散しやすくなり
     ます。春と同じですが、昼寝をして、さっぱりしたものを食べて陽をさらに養います。
     アイスクリームは冷たいので食べ過ぎると脾と胃の陽気が損なわれ易くなり
     ます。」
北村:「私は、アイスクリームが大好きなのですが、気をつけます。脾は脾臓で胃は胃腸
     の胃ですか。」
劉 :「全く同じではありません。中国医学の脾と胃は、脾臓と胃腑を言っているのでは
     なく機能活動のことです、食べ物の消化吸収を司っていると言う意味です。」
北村:「秋はどうするのですか。」
劉: 「秋は万物の成熟の季節で、陽気の活動が収まってきます。同時に陰気が始まって
     くるので、早く寝て早く起き、静かな気功(座って穏やに気功をする)を練習して、
     良い気分を保ち、神の機能(脳機能の中の精神的なもの)を正常に発揮させて
     養生を行っています。冬になると、気候が寒くなり、養生にはもっと陰気を保護す
     るのに注意しなければなりません。早く寝て遅く起きるようにします。」
北村:「冬には睡眠を長くとるのがよいことがわかりました。」

 精神を調整する摂生方法
北村:「他には何かありますか。」
劉: 「精神の調整も大切といわれています。いつも気軽な気持ちを保ち、できるだけ欲
    望を抑え、名誉などを欲しがらないことです。中国では高齢者は、適当な音楽体育
    療法(舞踏、読書、琴などの演奏、伝統的な太極拳、武術などの練習)をして、
    気分転換をはかり、精神の調整を行っています。
北村:「中国に行くと早朝に公園で老人が集まって運動をしている姿を見かけますが、
     このことですか。」(写真)
劉: 「そうです。」
 写真: 早朝に集まって運動をしている。(南京)
食事による養生方法
劉: 「食事については、衛生な食品をとり、量は沢山とらない(80%ぐらい)ようにします。
  そして、食事を取る時間は一定にして、偏食をしないようにします。」
北村:「日本でも腹八分という言葉があります。やはり食べすぎは健康に良くないのです
    ね。」
劉: 「腹八分は、中国では八分飽と言います。」
北村:「食べ物によいものはありますか。」
劉: 「長寿によい食べ物はたくさんあります。ごま、ライチ、桑の実、舞茸、蓮の実、クコ
    (枸杞)の実、ナツメなどがそうです。このほかに薬膳保健も行われます。薬物と
    食品を適当に組み合わせて、季節と個人の体調によって考えます。例えば、
    長白山人参、銀耳(白いキクラゲ)、山芋、冬虫夏草、茯苓、五味子などで作った
    多種類の健康食品は陽気を補助し、精神を安定させ、陰を養い、健康な体が
    作られ、正常な脳の働きを維持する作用があるといわれています。」
 
 薬物と針灸による方法
 北村:「薬と針灸はどうですか。」
劉: 「薬物と針灸も陰陽の平衡を保つことに役立ちます。老化を防いで疾病の予防と
    治療をして寿命を延長させる処方としては、首烏延寿丹、延年茯苓飲、
    六味地黄丸、歩長脳心通などがあります。」
北村:「陰と陽のバランスを保つような漢方薬を服用することも長寿に役立つと言うこと
     なのですね。」
劉: 「もちろん、それは数千年前から人々が望んで行っていることのひとつです。」
北村:「針灸も役立つのですか。」
劉: 「針灸は、人体の気と血液を正常に流し、経絡と気血のバランスを調整する予防と
    治療方法です。季節の春、夏、秋、冬ごとに気海(穴位の名称)などの穴位に1回
    灸をする方法は養生と疾病の予防の重要な手段としてよく使われています。
    これらは20回のよろず診察室で話をした未病先防の考えと一緒で、すでに病気に
    かかった人に対し、病状の悪化を防ぐ意味と同じくらい重要なことです。以上の
    養生方法に従うことで、体質が強化され、体の陰陽のバランスが保たれ、それに
    よって疾病が予防でき、不老長寿を期待することができます。そうすれば80歳で
    登山ができ、90歳でも一人で歩けて、100歳になっても自分で生活を管理できる
    と思います。これらのことは、現在の中国人の健康管理の目標のひとつになってい
    ます。」

中国医学のことをよく知らないと理解しにくいこともありましたが、中国に昔からある長寿についての考え方と方法の一部を紹介しました。十分な栄養と休養、適度な運動、落ち着いた心でいることを考えた生活が長寿につながるものと思います。
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