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ご長寿よろず診察室 神経内科のお話し その35

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第35回:突然めまいがして、立つことが出来なくなった70歳女性
担当ドクター 北村伸先生 (日本医科大学武蔵小杉病院 内科)


 突然にめまいを感じた三品さん(仮名)の話をします。三品さんは、70歳の女性です。変形性膝関節症で、近所の整形外科に通院していました。最近は、膝の痛みも無く、調子がよく、友人と旅行にも出かけていました。
めまいと吐き気
 8月のとても暑かったある日の夕方、三品さんは汗を流すためにシャワーを浴びました。浴室を出て、ソファーに座ったときに何となくめまいを感じました。めまいは、身体が揺れているという感じで、ぐるぐると回っているというものではなかったそうです。そのうちよくなると思い、しばらくソファーで横になって休んでいました。しかし、しばらくすると気持ちが悪くなり、吐いてしまいました。1時間ほど横になっていたら何となく落ち着いた感じがしたので、ベットに行こうとしましたが、ふらふらしてしまい、ひとりでは立って歩くことが出来なかったそうです。三品さんは、その日はとても暑かったので、疲れていたためと思い、朝になればよくなるだろうと考え、寝てしまいました。

 翌日の朝、気分は少しよくなっていましたが、後頭部が重い感じがしていました。ベットから立ち上がろうとしましたが、身体のバランスが上手く取れず、ひとりでは立って歩くことが出来ませんでした。ご主人が心配をして、受診をしてきました。
診察をすると
 血圧は150/86と、それほど高くありませんでした。耳鳴りや難聴は無く、四肢の麻痺もありませんでしたが、ふらふらしてしまい、立っていることが出来ませんでした。何かにつかまれば歩けましたが、支えが無ければすぐに倒れそうになってしまいました。

症状は突然に始まっており、立位の保持や歩行が出来ないことから、小脳の脳血管障害を疑いました。
 MRIでは
  すぐにMRIを行いました。左側の小脳半球に梗塞が認められ、小脳梗塞と診断しました(図)。
       
       拡散強調画像            T2強調画像         T1強調画像

  図: 三品さんのMRIイメージ
     矢印は小脳の梗塞を示しています。
  三品さんのめまいの原因は、小脳梗塞であったわけです。
 小脳の機能
 めまいは、小脳の病気の症状であることは第13回のよろず診察室に書きました。小脳には、私たちの動作が円滑に出来るように調整をする機能があります。したがって、小脳の働きが上手くいかないと眼球の運動障害、言葉を滑らかにしゃべることができない、四肢の運動が上手く出来ない、立ったり歩いたり出来ないなどの症状が見られます。
 小脳梗塞
  小脳に梗塞が生じると、多くの場合、突然にめまい(揺れている感じや回転する感じ)が生じ、吐き気や嘔吐を伴います。そして、四肢の麻痺が無いのに立ったり歩いたり出来なくなります。時には、四肢の運動が上手く出来ず、例えば、何かをつかもうとしたときに、目的の部位に伸ばした手の位置がずれて、一度ではつかめないということもあります。

 小脳梗塞は、大きくなければ生命に影響はありませんが、大きいときは、髄液循環を障害して水頭症を生じたり、脳幹部を圧迫して、命にかかわることもあります。
 三品さんの場合
 梗塞はそれほど大きく無く、水頭症を起こすことも無く、後遺症もなく軽快しました。以前にも話したように、脳血管障害はすぐに治療を開始する必要があります。脳梗塞の場合、梗塞の中心部の神経細胞は死んでおり、回復の見込みはありませんが、梗塞の周辺部の神経細胞は、早く治療をして血流が改善すれば、回復する可能性があります。三品さんは、運がよかったこともあり、大きな問題はありませんでしたが、めまいを感じた翌日でなく、その日に受診をするほうがよかったと思います。

 第4回よろず診察室でも話しましたが、脳梗塞を疑ったら、出来るだけ早く受診することを覚えておいてください。
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