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ご長寿よろず診察室 神経内科のお話し その40

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第40回:奇妙な朝食を用意した80歳女性
担当ドクター 北村伸先生 (日本医科大学武蔵小杉病院 内科)


 今回は、急に認知症になったので、診察をしてほしいといって、家族と来院した西さん(仮名)の話をします。
日課は、早朝の散歩と朝食の用意
 西さんは、息子さん夫婦と住んでいます。物忘れもなく、町の老人会にも積極的に参加をし、刺繍が趣味です。近所の人ばかりでなく、遠方からも刺繍を習いにきている人が沢山います。西さんは早起きで、散歩から帰った後に朝食を作り、家族を起すことが日課になっていました。
奇妙な朝食
 認知症になったと家族が思った日は、朝食ができてなく、西さんはぼんやりとして、椅子に座っていたそうです。息子さんが、朝ご飯はどうしたのと聞くと、今、用意すると言って立ち上がり、台所に行きました。しばらくすると食事を出してくれたのですが、いつもと全く違っていました。みそ汁は、お椀でなく、ご飯茶碗に入っており、ご飯と食パンと漬け物がお皿に一緒に盛ってあり、真ん中に生卵が殻のままのせられていました。

 息子さんが、いつもと違うじゃないと言ったそうですが、西さんは、そうかいと言って、そのまま椅子に座ってしまいました。息子さんは、西さんが急に認知症になってしまったと思い、受診してきました。
 診察をしてみると
  血圧は、180/100mmHgと高く、話しかけると答えるまでに少し時間がかかりました。上下肢の麻痺はなく、名前と年齢は言えました。しかし、どこが具合が悪いとか、どうしてここにいるのかなどきいても、答えることができませんでした。呼びかけないとすぐに目を閉じてしまうことがみられました。
 頭部CTスキャンを行ってみると
 すぐに検査をしてみると、西さんに脳出血のあることがわかりました(図)。奇妙な朝食を用意したのは、脳出血を起したからです。脳出血により、意識レベルが低下しており、おかしな行動をとったり、返事が遅かったり、答えられなかったことが考えられました。出血した場所は、認知機能と関係のある部位なので、行為の障害もあるのかもしれません。 
        
       
       図 西さんのCT
           左側の頭頂葉に脳出血(矢印)
認知症の始まり方
  認知症がある瞬間から急に始まることはまずありません。急に変なことを言ったり、奇妙な行動をするようになった時は、意識レベルが下がったり、認知機能と関係のある部位に脳血管障害を生じたことを考えます。西さんの原因は脳出血であったわけです。認知症と診断されるときには、意識は正常でなくてはいけないので、西さんは認知症ではありませんでした。

 アルツハイマー型認知症では、認知症の始まりを特定できることは難しいと思います。患者さんの家族に、いつ頃からおかしいと感じましたかと聞いても、1-2年前とか、非常にあいまいです。脳血管性認知症であっても、脳血管障害で入院して、家に帰って来てから、何となく変であったという程度のことが多いと思います。

 突然に認知症様の症状が見られた時には、脳血管障害を起こしたのではないかと最初に疑い、すぐに受診をしましょう。
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