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ご長寿よろず診察室 神経内科のお話し その48

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第48回:急に手が震えるようになり、幻覚を伴った75歳男性
担当ドクター 北村伸先生 (日本医科大学武蔵小杉病院 内科)


 2ヶ月前の外来に、手が震えるようになり、幻覚がでるようになった五十嵐さん(仮名)という75歳の男性が奥様と一緒に受診してきました。
症状の始まりは
 五十嵐さんは、今まで大きな病気をしたことはなく、正常に生活をしていました。5ヶ月ぐらい前から、少し胃の調子が悪くなり、近所の医院に通院をしていました。胃炎と診断され、2種類ほど薬を処方され服用していました。胃の症状は少しずつよくなっていったそうですが、3ヶ月ほど前から、手が震えるようになってきました。それと同時に、動作が遅くなったように奥様は感じていたそうです。

 通院している先生に手が震えることを話しました。薬が1種類追加されました。しばらく服用を続けていたところ、震えは無くなりませんでしたが、少なくなってきたそうです。その代わりに、誰もいないのに、そこに人がいるという幻覚がでてきました。

 奥様は、夫が認知症になったと思い私の所に受診をしてきました。
診察をしてみると
 診察時には幻覚はなく、記憶障害や日時についての見当識も正常で、構成障害もなく、認知症を疑わせるものはありませんでした。神経学的な診察では、両手の振戦が安静時にみられました。動作や歩行は少し遅く、軽度の両側上下肢の筋固縮がみられました。
 検査では
 甲状腺の機能も含めて、血液の検査では異常は認められませんでした。頭部のMRIも正常でした。
 診断は
  以前のよろず診察室(第12回)で話しましたが、手の震えがでるような甲状腺機能亢進症でないことは、血液検査でわかりました。安静時の振戦、筋固縮、動作緩慢がありましたから、パーキンソン病が疑われます。第11回のよろず診察室で話したように、パーキンソン病の症状を起こす原因はいくつかあります。MRIでは、脳梗塞はないので、脳血管性のパーキンソニズムでないことはわかりました。

 そうすると、残るのはパーキンソン病か、服用していた薬によるものかもしれません。パーキンソン病は急に発病して、幻覚が出てくることはまずありません。五十嵐さんの場合は、服用していた薬による事がもっとも疑われます。
 服用していた薬
  処方されていた薬をチェックしてみました。胃の薬のひとつにスリピリドが処方されていました。スリピリドはパーキンソン病の症状が出ることがあります。そして、震えを押さえるために塩酸トリフェキシフェニジルが処方されていました。この薬の服用で幻覚がでることもあります。

 薬剤性のパーキンソニズムと薬による幻覚と診断をしました。五十嵐さんが治療を受けていた先生に、診察結果を知らせて、スルピリドと塩酸トリフェキシフェニジルを中止してもらうようにしました。
 3週間後
  薬を中止して、私の所の受診したときには、幻覚は消失しており、パーキンソン病の症状も無くなっていました。やはり薬剤性のものであったことが確認できました。

 薬を服用してから症状が出るようになったときは、その薬が原因である可能性のあることを覚えておいて下さい。
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