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神経血管減圧術 

Microvascular Decompression (MVD)

顔面(がんめん)けいれん・三叉神経痛(さんさしんけいつう)の外科治療

日本医科大学千葉北総病院 脳神経外科 講師 梅岡克哉

日本医科大学・同大学院 卒業 (医学博士)

顔面神経とは・・

顔の表情を作るための筋肉に指令を送る神経が顔面神経です。眼をつぶる、口を動かすなどの運動は、顔面神経の働きによっておこります。

三叉神経とは・・

顔の知覚を脳に伝える神経が三叉神経です。大きく3本の枝に分かれています。第1枝が額、第2枝が頬、第3枝があごの周囲の知覚を感じます。

どちらも、頭の中の脳幹から枝分かれして、顔面に広がります。

顔面けいれん・三叉神経痛とは・・・

顔面神経・三叉神経は頭の中の脳幹という脳の中心部から枝分かれし、顔全体に広がってそれぞれの働きをします。神経が脳幹から分かれた部分に血管があります。脳幹・神経・血管はすべての人で同じような場所にありますが、その位置がわずかに違うことによって神経と血管がぶつかってしまうと、血管の刺激によって思わぬ症状が現れます。この症状が、顔面けいれん・三叉神経痛です。

顔面けいれん (Hemifacial spasms) の症状

自分の意志とは無関係に、顔の片方が勝手にぴくぴく動いてひきつれる状態が片側顔面けいれんです。最初は緊張した時などに眼輪筋(目の周りの筋肉)が痙攣するだけですが、頬から口の周り、頸部にまでけいれんが広がります。さらに症状が進行すると、常に目が閉じた状態となってしまいます。病気自体は生命にかかわるものでないため、放置しても差し支えありませんが、美容上の問題から対人関係に苦労する場合や、一日中片目をつぶってしまうことで日常生活にも不便を感じる場合には治療を考えます。

三叉神経痛 (Trigeminal Neuralgia) の症状

顔の一部分に、突発的な非常に強い痛みが起こります。一瞬の走るような痛みで、数秒から数十秒で消失します。長くても数分間ですので、1日中起こるような痛みは三叉神経痛でない場合がほとんどです。痛みは日常生活に欠かせない動作である、洗顔・歯磨き・食事などの顔面に対する刺激が引き金となります。症状が進行すると、食事が全くとれず、風があたっただけでも激痛が走るようになるため、生きていくのがつらいと訴える方も少なくありません。齲歯と診断され歯科的治療をうけられる場合もあります。

 

顔面けいれんの治療

内服治療

顔面けいれんの起こり初めには、精神安定剤・抗痙攣剤などで痙攣が楽になる場合もあります。ただ、顔面痙攣を止めるほどの効果は期待できません。

ボツリヌス毒素による治療

ボツリヌス毒素は筋肉を麻痺させる毒素です。これを希釈して薬としたものがボトックス注射です。顔の筋肉に注射することにより、筋肉を麻痺させて顔面痙攣が起こらないようにします。根本的な治療ではないため3-4か月で効果がなくなり、繰り返して注射をする必要があります。また、繰り返して注射することにより、顔面神経麻痺となる場合があります。

手術療法

微小血管減圧術という手術を行います。唯一の根治的な治療です。

 

三叉神経痛の治療

内服治療

顔面けいれんの場合と同様に、抗痙攣剤が使用されます。カルバマゼピン(テグレトール)が非常に効果的で、8割以上の方は内服治療で一時的に痛みを改善させることができます。しかし、眠気やふらつきなどの副作用が強い場合、肝機能障害や薬疹などで内服が続けられなくなる場合があります。また、病気の経過が長くなると、薬が効きにくくなる場合もありますが、内服の工夫をすると、痛みが改善することもあります。

神経ブロック

神経破壊薬や高周波の電気凝固によって神経を破壊させることにより、痛みの伝わりを減らします。1年程度痛みを和らげることが出来ます。神経を破壊させるために、顔に痺れたような感覚が残ります。顔の痺れが良くなったころに、痛みが出てくる場合がほとんどです。

手術療法

微小血管減圧術という手術を行います。唯一の根治的な治療です。

微小血管減圧術とは

顔面けいれん・三叉神経痛に対する、唯一の根治療法です。全身麻酔下に耳の後方に5㎝程度の皮膚を切開し、頭蓋骨に穴をあけます。小脳と頭蓋骨とのわずかな隙間を使って、脳幹から神経が枝分かれした場所まで到達します。ここで、神経を圧迫している血管を見つけて神経に接触しないように移動させます。移動させた血管が元に戻らないように、テフロン綿にフィブリンのりを浸したもので接着固定させます。手術時間は3-4時間程度です。

術後の経過

術後1-2日はめまいと嘔気がありますが次第に消失し、術後7日目に抜糸、早ければその翌日に退院できます。退院後、1種間程度自宅で安静にした後に仕事に復帰される方が多いようです。

三叉神経痛では、ほとんどの症例で手術の直後から痛みが取れます。手術前に内服していた薬は入院中に中止することができます。

顔面けいれんでは、ほとんどの症例で手術直後から痙攣がなくなりますが、痙攣が消失するまでに数か月かかる場合もあります。

手術の危険性

顔面神経と並走して聴神経があり、これが障害されることにより聴力が失われることがあります。このほか、顔面神経の麻痺や喉を動かす神経の麻痺による嚥下障害や嗄声、目を動かす神経の麻痺による複視、髄液漏があります。

顔面けいれん・三叉神経痛の手術は脳神経外科のなかでも比較的特殊な分野であり、国内でもそれほど多くの手術が行われているわけではありません。

当院では、顔面けいれん・三叉神経の専門外来を行っておりますので、薬物療法から手術まで、幅広い説明・治療を行います。

外来

日本医科大学千葉北総病院 毎週土曜日 午前

日本医科大学付属病院 毎月第3木曜日 午後2時から4時

緊急手術・学会等で休診することがありますので、外来にお問い合わせの上、受診されることをお勧めします。

 

手術写真

三叉神経痛

  1. 三叉神経の奥から血管が神経を圧迫しています。
  2. 血管を手前に引出
  3. 神経から離して固定用のテフロン綿で固定します。
  4. 血管移動後の様子です。神経の周囲に接触している血管はなくなりました。

顔面けいれん

顔面けいれんは、顔面神経が脳幹から枝分かれした部分での血管圧迫によっておこります。 ですから、手術では神経が枝分かれした部分を十分に観察することが重要です。

  1. 舌咽神経・迷走神経の奥で顔面神経は脳幹から枝分かれしています。 その部分に後下小脳動脈が走行しています。 facial spasm 1
  2. 後下小脳動脈を持ち上げると神経が圧迫されていた部分が観察されます。facial spasm 2
  3. 圧迫血管を移動させ、テフロン綿で固定します。顔面神経を圧迫する血管はなくなりました。facial spasm 3

 

舌咽神経痛

  1. 後下小脳動脈が舌咽神経を圧迫しています。

  2. 舌咽神経から後下小脳動脈を剥離しています。

  3. 後下小脳動脈を迷走神経の手前に引き出し、テフロン綿を巻きつけます。

  4. 圧迫血管を移動させ、テフロン綿で固定します。舌咽神経を圧迫する血管はなくなりました。